駒ヶ岳 2014 ヘヴィリーピーテッド
アメリカンホワイトワーク#1855 259/578 アジア地区の空港免税店向け。
59.8% 開栓から1年程度
Nose
バニラ、洋ナシ、蜂蜜に香ばしいピスタチオ。癖のない素直な樽香に隠れてスモーキーなフレーバーが立ち昇る。徐々にフルーティさが強まり柑橘系のジャムが強く主張する。
Palate
度数なりのアルコールの刺激から、モルティな甘み、バニラ、ピスタチオ、余韻に樽の焦げたような苦みが残る。
Rating
Good~Very Good
本坊酒造のマルス信州蒸留所で作られるシングルモルトウイスキー駒ヶ岳、そのピーテッドボトルです。使用されたモルトはヘヴィーピートでフェノール値は50PPMとのことですが、それほど癖はなく素直なスモーキーさで薬品ぽいヨードさは感じません。しっかりとついた樽感がピートをマスクしている印象で、慣れていない人にも親しみやすいのではないかと思います。
ぱっと飲んでみると10年ぐらいのカリラかなといったところですが、実際は2014年の蒸留に対してリリースが2017年なので、熟成は長く見積もっても3年程度。相当若いウイスキーなんですが存外ニューポッティ感はありません。むしろこの熟成の短さにしては強めの樽感があり、驚くほどリッチなフルーティさがありますが一方で若干のえぐみも感じます。最初は度数なりにアルコールの刺激が強く香味が拾い難いのですが、少量加水するとかなりフルーティさが強調されて美味しくいただけます。
このボトルはファーストフィルなんでしょうが、きっとこの後に詰められた原酒はもっと長く熟成されるのでしょうね。
カバラン 10周年ボトル マルゴーワインカスク / ポーイヤックワインカスク
ボルドー5大シャトー マルゴーカスクとラフィットカスク。
ラフィットは契約の関係でラベルには表記できず、かわりに同シャトーが所在する地区のポーイヤックと表記されています。
アルコールは共に57.8%。バテッドで調整したのか、加水なのか。
マルゴーカスク
Nose
ホットケーキにバターとメープルシロップ、おまけでバニラアイスも乗っている。そこから酸味の効いた柑橘か、青梅。
Palate
滑らかな舌触りで、ココアをまぶした生チョコレート。程よい渋みと上品で濃厚な甘さが心地よい。余韻にかけて酸味のある柑橘やベリー系フルーツが顔を出す。
Rating
Very Good
ポーイヤックカスク
Nose
基本的にマルゴーと同系統の香りだが少しフルーティな方向で、レーズン、焼きリンゴ、カラメル、バニラ。
Palate
クリーミーでスイート、要素はやはりココアとチョコレート。ドライプラムやレーズンのようなコクのあるフルーティさ。
マルゴーよりもどっしりとした味わいで樽感が強くでている印象。気にならない程度のわずかな硫黄があるが嫌味はなく程よいアクセントに。
Rating
Very Good
カバランが2008年の初リリースから10周年を記念して発売したワインカスクの2種類です。両者は基本的には同系統の味わいで、非常に滑らかでクリーミーな舌触りに程よいタンニンと上品な甘みのバランスが秀逸です。
個人的にはワインカスクはこれまでの経験からあまり好みではないのですが、こちらはどちらかというと良いシェリー樽といった趣の香味に仕上がっており、ハイプルーフなだけあってパワフルではあるのですが、その割に熟成感が十分あってアルコールの刺激は少なく仕上がっています。これまでのリリースを見ても、カバランが特に樽に力を入れているのがよく分かります。最近の濃い色をしたシェリーを飲むよりもよっぽどバランスがよくおススメですが、値段もそれなりに高いのは悩みどころです。私は台湾で200mlの小瓶を6000円ぐらいで購入しましたが、フルボトルではなかなか思い切れない値段設定です。
比べてみるとポーイヤックカスクのほうがよりウッディーで樽感が効いており、フルボディな味わいで、色も若干濃いようです。この辺の違いは元のワインの違いがでているのか、残念ながら私は5大シャトーに全く縁がないもので分かりません。一度ソムリエの方に飲んでみてもらい、意見を伺ってみたいものです。
グレングラント 18年 オフィシャルボトル
オフィシャルの18年 43% 日本ではアサヒビールが輸入元。
開栓後2週間程度
Nose
トップノートは非常にフルーティで好印象。リンゴやキウイに蜂蜜やバニラが加わる。徐々に樽感とエステリーさが現れ、良い木材の香りに。少しホットなスパイスのアクセント。
Palate
軽やかで雑味がなく綺麗な味わい。ナッティな甘み、アマレットというか杏仁豆腐。程よい酸味もありジューシー。熟成感はさほど感じないものの、アルコールの刺激や粗さはなくスムーズ。
Rating
Good~Very Good
バーボン樽のお手本のような1本。香りが華やかでわかりやすく、味わいは軽やかで飲みやすい。一般的な知名度はよくわかりませんが、普及価格帯のウイスキーとは明らかに一線を画すフルーティーな要素があり、普段ウイスキーを飲まない方にも良いと思います。変な言い方かもしれませんが、最上級のエントリーモデルといったところでしょうか。
グレングラントはスペイサイドのロセス地区に所在しており、こちらは2017年頃から流通している現行のフラグシップボトルになります。逆算すると2000年以降の原酒が主体となっているのでしょうか。
個人的にはグラントというとシェリー樽のイメージが強いのですが、こちらは100%アメリカンオークのバーボン樽とのこと。味わいもその通りでバーボン樽系のフルーティーさが主体で明るい雰囲気があります。
18年熟成という割にはかなりフレッシュで、よく言えばネガティブな要素がなく非常に綺麗でクリーンな香味、となるのですが、その反面熟成感や複雑さはさほどなく重度のウイスキーマニアには少々物足りないかもしれません。
ハイボールも合いそうなものですが、比較的軽めボディのためソーダで割るとちょっとぼやけた退屈な味に感じてしまったので個人的にはストレートが良いと思います。
グレンタレット 1987-2015 27年フェイマスグラウス リミテッドエディション
メルボルン空港限定品
カスクNo.634 1/266 カスクストレングス44.9%
開栓から半年程度
Nose
まず酸味のあるフレッシュなフルーツ、レモンや白桃、梅。そこから蜂蜜やバニラ、香ばしい麦。少しメンソール。
Palate
なめらかでソフトな舌触り、シトラスや桃のフルーツキャンディ、トフィで華やか。余韻はナッティでややオイリーなニュアンスが舌に残る。
Rating
Good~Very Good
格好いいデザインに惹かれて購入した1本。開栓当初は度数の割にアルコール感が強く、香りはともかく飲み疲れる味わいでしたが徐々にこなれてきた印象です。
香り・味わい共にかなりフルーティで酸味もしっかりとあり、ともすればややソーピーな雰囲気にも感じられますが同年代のボウモアのようなはっきりしたものではなく、それがかえって良いアクセントになっています。
グレンタレットは同じエドリントングループのマッカランやハイランドパークと共にフェイマスグラウスの主要モルトのひとつとして知られ、このボトルもむしろ蒸留所よりも目立つ形で表記されています。他方グレンタレット蒸留所にもフェイマスグラウスのビジターセンターがあり、いかに両者が重要な関係(というか同一グループですが)であるか一目瞭然と購入当初は思ったわけでありますが、2018年にエドリントングループはグレンタレットを手放しています。
昨今のウイスキーブームもありますし、タウザーのエピソードもあるタレットは売り出しやすいような気もするのですがこれは素人の考えなんでしょうか。
個人的には70年代の特にフルーティな時代はもとより本ボトルも含めて80年代後半のボトルも華やかで分かりやすく好きな蒸留所なので、今後のどのような展開になるのか注目しています。
またバランタインにもありましたが、このブレンデッドモルトのキーモルトシリーズって非常に面白い試みだと思うので、ジョニーウォーカーとかシーバスリーガルも企画してくれればいいのになんて思ってます。もっとも必ずしも自社所有の蒸留所から成り立っているわけではないので契約的に簡単ではないのかもしれませんが。
ちなみにこのフェイマスグラウスの意匠ボトルは毎年どこかしらでリリースされていたようで、知っているだけで1986‐2014グラスゴー向け、1987-2015メルボルン向け、1988‐2016台湾向け、1989-2017シンガポール向けがあるのですが全て27年でボトリングされているのが面白いところです。実は台湾向けもストックに控えているのでこのボトルの後継には今のところ困っていません。
グレンエルギン 1995-2017 21年 シングルモルツオブスコットランド
蒸留:1995年12月 瓶詰:2017年8月 21年熟成
ホグスヘッド、カスクNo.3199 55.4%
Nose
初めは少しきつめのアルコール感があり、香りがマスクされている印象。まずバニラ、メープルシロップ、そして清涼感のある独特なカリンぽさ。落ち着いてくると、香ばしいモルティさや、よりフルーティーで甘酸っぱいパイナップルや青リンゴの要素がふんだんにでてくる。
Palate
雑味がなく綺麗な味わい。クリーミーで、蜂蜜や麦芽の強い甘さ。余韻はドライでオーキー、ペパリー。
Rating
Good~Very Good
台湾で購入したエリクサーディスティラリーのグレンエルギン1995です。最近日本でもリリースされたようですが、54.2%のシスターカスクもあり、どちらが良いということではありませんが微妙に注意が必要です。
香り、味わいともにまだ若々しく、アルコール感も度数なりにあるので初めはとっつきにくい印象ですが、徐々に落ち着いていき魅力的なフルーティーさが現れます。味わいは雑味がなく素直で、香りほどフルーティーという訳ではなく、麦芽の甘みや香ばしさをストレートに味わえるタイプでしょうか。
このボトルについては今飲んでもなかなかですが、酒質的にはまだまだ余裕があるといったところで、ボトルとして長期間保管して変化をみても良いでしょうし、将来的にリリースされるあろう同ヴィンテージの長熟ボトルへの期待も高まる出来だと思います。
グレントファース 20年 ブティックウイスキー バッチ4 LMDW60周年記念ボトル
記載はないが2016年ボトリングの20年熟成。蒸留は1995年~1996年頃か。
46.9% 開栓から1年程度
Nose
トップノートはバニラ、アーモンドミルク、ややワクシー。そこから少しこもったような缶詰のパイナップルや桃、花束、蜂蜜。とても華やか。
Palate
アプリコットジャム、桃、シナモン、ジンジャー、ナッツ。程よい樽感があり、ドライな渋みとホワイトペッパーのようなスパイシーさが余韻に続く。
Rating
Good~Very Good
ブティックウイスキーがメゾン60周年記念を記念しリリースした1本。46.9%と落ちていることもありパンチはありませんが、濃縮感のあるフルーティさが好印象です。
グレントファースは1898年創業の老舗蒸留所で、スペイサイドはキース地方にあり、ご近所にグレンキースやストラスアイラ、オルトモア等があります(Googleマップ調べ)。もともとブレンデッドウイスキーのブキャナンズやホワイト&マッカイ用の原酒供給を目的に設立されたため、その歴史を通してシングルモルトとしての流通は多くなく、G&M社のリリースが準オフィシャル的な扱いをうけることもありますがオフィシャルボトルは殆どありません。
そんな訳でモルトラバーはさておき一般的な知名度は今一つな蒸留所だと思いますが、近年はバランタインに関連するリリースがでていることもあり、少し注目を浴びてきているかもしれません。2014年に発売されたバランタイン17年グレントファースエディションや、2017年のバランタインキーモルトシリーズは記憶に新しいところかと思います。
今回はそのあたり、バランタインとの関係性についてちょっと考察してみます。
改めて振り返ってみると、このシングルモルトシリーズや17年のトファースエディションは現代バランタインの象徴的なリリースであったように思います。何故かというのは、そもそもグレントファースはバランタインにとっては新参であり、主要構成原酒になったのが少なくとも1989年以降ではないだろうか、というところにあります。
まず初めに、グレントファースはアライド社に買収される1989年まではディアジオ前身のUD社に属しており、すなわち同社が主力ジョニーウォーカーの最大のライバルであるバランタインに原酒を供給していたのか、という疑問があります。
そしてトファースは1980年代のスコッチ不振による需要低迷により1985年~91年まで操業を休止しており、アライド社が閉鎖前の樽をどの程度引き継いだのか不明ですが89年当時既に4年の休止期間があったことを考えると、残っていた原酒はそう多くなかったであろうと推測できます。つまりUD社が原酒を供給していなかったとすると、バランタインに使用されるようになったのはトファースが蒸留を再開する1992年以降、更に熟成期間を考えると最も若いファイネスト向けであっても2000年以降のボトルから本格化したのではないかと考えることができます。
そこで2014年に発売されたバランタイン17年のトファースエディションですが、逆算すると使われている原酒はおそらく再開後の92年~96年頃までであり、それら新しい原酒の熟成が丁度良い塩梅になったかというタイミングでの満を持しての17年物と捉えることができます。そんな訳でバランタインとしてはもう俗に言う魔法の7柱なんかではなく、ミルトンダフ、グレンバーギ、スキャパと共にこれらを四天王として新たな柱にしたい、と考えての一連のリリースだったのではないかと感じます。
もっとも以上は私のただの推測なので、実際にいつからグレントファースがバランタインに使われるようになったのか、はっきりとした答えを見つけることはできませんでした。実際にはもっと昔から供給されていたのかもしれません。この辺の事情に詳しい方がいましたら、是非とも教えていただきたいです。
さて最後に個人的なグレントファースの印象はというと、軽やかで桃っぽい瑞々しいフルーティーさと、花の蜜のような甘さです。その辺がブレンド用に重宝されているのでしょうが、シングルモルトとしてもその華やかで繊細な味わいは万人に好かれるであろう優等生タイプだと思いますし、ウイスキーを飲みなれていない方や、女性にもおススメできる蒸留所です。
このボトルもそうですが、1996年ヴィンテージがリリースも多く評判も良いようなので、機会があれば試してみてください。
バルブレア 1990-2017 セカンドリリース
蒸留:1990年 瓶詰:2017年 26~27年熟成 46%加水
アメリカンオークバーボンカスクとスパニッシュオークシェリーバッドのバテッド。
Nose
アップルフィリング、レーズン、蜂蜜、ミルクチョコレート。ジンジャーのようなスパイシーさがアクセント。
Palate
甘くてスパイシー、オーキーで相応の熟成感。焼いたリンゴ、シナモン、アップルパイのテイスト。パイナップルにミントを加えたような爽やかな酸味、ビターなチョコレートの要素。余韻は長く、程よい樽の渋みが舌に残る。
Rating
Very Good
バルブレアのオフィシャルは熟成年数ではなく、蒸留年のヴィンテージ表記となっていることが特徴です。熟成のピークを迎えた樽からボトリングするという方針で、特定の熟成年数にこだわっていないということですね。この1990年ヴィンテージのファーストリリースは2014年ですが、今回のセカンドリリースはそこではまだ熟成が十分でないと判断された樽が満を持して使われてるわけです。果たしてサードリリースはあるのか。
バルブレアは特に好きな蒸留所です。90年代以降の近年リリースも総じてレベルが高く、フルボディで厚みのあるクリーミーさや、焼いたリンゴのような凝縮した甘味や酸味が個人的に特に好みです。今回のボトルはシェリーとバーボン樽の好ましい要素がバランスよく備わっており、加水で飲み安いということもあり普段使いに最適な1本だと思います。