ウイスキーレポート

シンガポール在住の酔っ払いのウイスキー備忘録です。

グレントファース 20年 ブティックウイスキー バッチ4  LMDW60周年記念ボトル

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Glentauchers 20 Years Boutique Whisky

記載はないが2016年ボトリングの20年熟成。蒸留は1995年~1996年頃か。

46.9% 開栓から1年程度

Nose

トップノートはバニラ、アーモンドミルク、ややワクシー。そこから少しこもったような缶詰のパイナップルや桃、花束、蜂蜜。とても華やか。

Palate

アプリコットジャム、桃、シナモン、ジンジャー、ナッツ。程よい樽感があり、ドライな渋みとホワイトペッパーのようなスパイシーさが余韻に続く。

Rating

Good~Very Good

ブティックウイスキーがメゾン60周年記念を記念しリリースした1本。46.9%と落ちていることもありパンチはありませんが、濃縮感のあるフルーティさが好印象です。

 


グレントファースは1898年創業の老舗蒸留所で、スペイサイドはキース地方にあり、ご近所にグレンキースやストラスアイラ、オルトモア等があります(Googleマップ調べ)。もともとブレンデッドウイスキーのブキャナンズやホワイト&マッカイ用の原酒供給を目的に設立されたため、その歴史を通してシングルモルトとしての流通は多くなく、G&M社のリリースが準オフィシャル的な扱いをうけることもありますがオフィシャルボトルは殆どありません。

そんな訳でモルトラバーはさておき一般的な知名度は今一つな蒸留所だと思いますが、近年はバランタインに関連するリリースがでていることもあり、少し注目を浴びてきているかもしれません。2014年に発売されたバランタイン17年グレントファースエディションや、2017年のバランタインキーモルトシリーズは記憶に新しいところかと思います。

今回はそのあたり、バランタインとの関係性についてちょっと考察してみます。

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Ballantine’s Single Malt Serious



改めて振り返ってみると、このシングルモルトシリーズや17年のトファースエディションは現代バランタインの象徴的なリリースであったように思います。何故かというのは、そもそもグレントファースはバランタインにとっては新参であり、主要構成原酒になったのが少なくとも1989年以降ではないだろうか、というところにあります。


まず初めに、グレントファースはアライド社に買収される1989年まではディアジオ前身のUD社に属しており、すなわち同社が主力ジョニーウォーカーの最大のライバルであるバランタインに原酒を供給していたのか、という疑問があります。
そしてトファースは1980年代のスコッチ不振による需要低迷により1985年~91年まで操業を休止しており、アライド社が閉鎖前の樽をどの程度引き継いだのか不明ですが89年当時既に4年の休止期間があったことを考えると、残っていた原酒はそう多くなかったであろうと推測できます。つまりUD社が原酒を供給していなかったとすると、バランタインに使用されるようになったのはトファースが蒸留を再開する1992年以降、更に熟成期間を考えると最も若いファイネスト向けであっても2000年以降のボトルから本格化したのではないかと考えることができます。


そこで2014年に発売されたバランタイン17年のトファースエディションですが、逆算すると使われている原酒はおそらく再開後の92年~96年頃までであり、それら新しい原酒の熟成が丁度良い塩梅になったかというタイミングでの満を持しての17年物と捉えることができます。そんな訳でバランタインとしてはもう俗に言う魔法の7柱なんかではなく、ミルトンダフ、グレンバーギ、スキャパと共にこれらを四天王として新たな柱にしたい、と考えての一連のリリースだったのではないかと感じます。

もっとも以上は私のただの推測なので、実際にいつからグレントファースがバランタインに使われるようになったのか、はっきりとした答えを見つけることはできませんでした。実際にはもっと昔から供給されていたのかもしれません。この辺の事情に詳しい方がいましたら、是非とも教えていただきたいです。

 

さて最後に個人的なグレントファースの印象はというと、軽やかで桃っぽい瑞々しいフルーティーさと、花の蜜のような甘さです。その辺がブレンド用に重宝されているのでしょうが、シングルモルトとしてもその華やかで繊細な味わいは万人に好かれるであろう優等生タイプだと思いますし、ウイスキーを飲みなれていない方や、女性にもおススメできる蒸留所です。

このボトルもそうですが、1996年ヴィンテージがリリースも多く評判も良いようなので、機会があれば試してみてください。