閉鎖蒸留所ロッホサイドを飲み比べる。 オールドモルトカスク 1979-2001、他
閉鎖蒸留所のロッホサイドの飲み比べです。
場所は以前ご紹介したThe Swan Song。前回はコニサーズチョイスを試しましたが、こちらにはまだまだあります。
東ハイランドに位置するロッホサイドは1957年創業。残念ながら1992年に閉鎖された蒸留所で、建屋も2004年には解体されてしまい復活の望みはほとんどありません。元来ポットスチル2基体制で生産量は多くなく、ほとんどブレンデッド用に原酒を供給していたため、シングルモルトとしてボトリングはそう多くありません。オフィシャルボトリングもMacNab名義の10年物があっただけとのこと。
そのためロッホサイドはなかなかに知名度の低い蒸留所。かくいう私もつい先日初めて飲んだばかり。今回はその特徴を少しでも理解すべく、ちょっと飲み比べをしてみました。
ロッホサイド 1979-2001 オールドモルトカスク (Lochside Old Malt Cask)
22年熟成、アルコール度数50%。推定リフィルバーボン樽。
Nose
桃、マンゴー、香ばしいモルティさ、紅茶、少しオイリー。そして紅茶。
Taste
青リンゴやナシ、キウイといったフルーツの要素が満載、渋すぎない紅茶や、白ワインのミネラル感。ココナッツオイル。
Rating
Very Good~Excellent
1杯目はダグラスレインのメインシリーズ、オールドモルトカスク(略してOMC)。このシリーズはノンチル、ノンフィルターながらも殆どが50%に加水調整されてボトリングされています。
香り味わいともに大変フルーティ。また紅茶の要素をかなり強く感じます。よってリフィルシェリーかと思ったのですが、バーテンダー曰く、恐らくリフィルのバーボン系だろうとのこと。うーん、難しい・・・
80年代ロッホサイドはとにかくフルーティーとの評判ですが、まさにその通りで、そこに紅茶の要素が加わって、フルーツティーといったイメージ。そこにほんのりとココナッツオイルの要素が加わります。かなり美味しいです。
ロッホサイド 1981-2002 ケイデンヘッド (Lohoside Cadenhead's)
20~21年熟成、アルコール度数60.7%、シェリーホグスヘッド。
Nose
トースト、紅茶、グラッシーでコリアンダーやターメリックのようなスパイス感。
Taste
レーズンバター、蜂蜜、桃。余韻は長く、グレープフルーツのような酸味とオーク、僅かにホワイトペッパー。
Rating
Very Good
続いてケイデンヘッドのオーセンティックコレクションです。このシリーズは基本的に欧州のケイデンヘッドショップで販売されており、シングルカスク、カスクストレングスです。日本でよくみる四角形のスモールバッチは大体2樽をヴァッティングしたものなので、微妙に違います。どちらが良いということではないと思いますが、スモールバッチの方がボトリング総本数が増えるので、若干手に入れやすいですね。
味わいはOMCの後に飲むとフルーツ感は抑え目。かわりに樽由来と思われるレーズン感とロッホサイドの持つ(と思っている)クリーミーな特徴が合わさりレーズンバターのような香味。シェリーの影響はそこまで大きくないが、スパイスの要素は樽由来と思われる。
60%上のアルコール度数ながらも熟成感がありスムーズで滑らか。
ロッホサイド 1981-2000 ロンバード ジュエルズオブハイランド
19年熟成、アルコール度数50%、推定リフィルバーボン樽。
Nose
モルティでクリーミー。
Taste
レモンクリーム、グラッシーな芝生、アボカド、ワックス、徐々にラズベリーや桃。
Rating
Good~Very Good
老舗ボトラー、ロンバードのジュエルシリーズ。こちらもアルコール度数は丁度50%ということで、加水だと思われます。この50%思想は一体なんなんでしょう。経験的にそれぐらいが一番美味しいと分かっているのでしょうか。そういえば富士山麓も50%。
話がそれてしまいました。
こちらも80年代の蒸留ですが、フルーティというよりは植物的な方向で、クリーミーさが主体的。OMCのフルーツ感とこのボトルのクリーム感がロッホサイドのイメージとは同行者の言。
今回の試したものは三者三様それぞれ違いはありますが、全体的にハイランドらしいミディアムからライトボディな軽めの質感で、クリーンな味わい。クリーミーな特徴もありますが、ローズバンクのようなこってりしたものではなく、脂肪分の少ない軽いもの。特に最初にいただいたOMCはフルーツ要素、中でも桃の香味ふんだんに出ていて素晴らしい出来。
ロッホサイドは閉鎖1年前の1991が良いヴィンテージとの評判も聞きますが、80年代前半のこれらもバランスよく仕上がっています。
なんでこんな美味しいものが閉鎖されたのか不思議ですが、当時はオフィシャルボトリングもほとんどなく、今日本でもネガティブな話題にもなっている所謂バルクウイスキーとして海外への輸出がメインだったとのことで、ウイスキー需要低迷と共にその歴史に幕を閉じたのは仕方ないところかもしれません。
この日はレダイグ好きのケルビン氏はおられませんでしたが、彼の書いた絵を見せてもらいました。
なんだか分かりますか?
カウンターの上のボトルを見て気が付きましたが、彼がマル島を訪問した際に描いた蒸留所周辺の街並みだそうです。
いやはや相当なレダイグマニアですよ。
この日は結局相当飲んでしまいましたが、やはりこうやって同じ蒸留所のものを比較しながら飲んでみると面白いですね。次回はレダイグ回にしましょう(たぶん)。