ハイランドパーク 1920年代蒸留 40年 オフィシャル セラミックボトル 他2本
先日フェイスブックで気になる投稿が。
1920年代のハイランドパーク・・・!?
正直言って、美味しいかどうかは分からない、いやむしろ美味しくない可能性の方が高いのでは、というほどのオールドボトルです。でもそんなことは捨て置いて、今このチャンスを逃すわけにはいかないと思い、早速飲んでまいりました。久住昌之原作/食の軍師風に言うと、ウイスキー者として負けられん!ということです。
これは私一人には荷が重いので、バーテンダーの友人を誘って行ってきました。
ハイランドパーク 1920年代蒸留 40年
オーナーのフェイスブック情報によると、蒸留は1920年中ごろから末にかけて、オーバー40年熟成ということなので、ボトリングは1973年か74年というのが、蒸留所からの回答だそうです。
【Nose】
長熟アルマニャックのような芳醇なランシオ香、爽やかでほろ苦いディル、僅かに火薬やヒネたような香り。
【Taste】
モルティで濃厚な黒糖、ラムのような甘味、タンニン、ほんのりと塩気、ピートはほとんど感じられない。余韻は極めて長くサトウキビの絞り汁のような甘味がいつまでも舌の上に残る。
【Rating】
Excellent‼
【Thought】
まずあまりにも芳醇な香りに驚きました。これをブライングで出されたら、長熟のアルマニャックと答えても不思議ではありません。僅かにヒネた感じはありますが、予想外に生き生きとしたパンチのある香り。ノージングの段階からしっかりとアルコールを感じ、少なくとも40%は維持しているであろうことが分かり、これはまだ生きている、と俄かにテンションがあがります。
飲んでみると、50%、もしかするとそれ以上のアルコール感があり、まったく抜けていない素晴らしいシェリー樽のウイスキーです。濃厚な黒糖系の甘味は、間違いなくシェリー樽からもたらされたもので、その影響は非常に大きくハイランドパークの特徴を探すことは困難ではありますが、スペイサイドの超熟シェリー系のように、樽一辺倒ののっぺりした味わいとは一線を画しており、モルティなボディーの厚みも感じます。こういうオールドボトルにはフェイクの問題が付きまといますが、そんなことは関係なく素晴らしくラブリーなモルトと断言できます。
オールドアライアンスでは、これまでも何本かこのボトルに出会ってきたそうですが、どれも液面は2割以下まで減っており、まったく酷い状態であったそうです。なんでもセラミックボトルはガラスより蒸発が早く進むのだそう、じゃあなんでそんあボトルに、とも思ってしまいますが。今回開栓したものはとても状態が良く、9割程度を維持していたとこのこと。それでもオリジナルのコルクは上記写真のようにボロボロで、いかに長い年月を経たのか分かります。
このボトルを買う際には、必ず重量を確かめてからにしろ、とおよそ有難きありがたいコメント。こんなのどこで買うんですか・・・
裏面には地図があり、ベネチアとオークニー諸島が線で結ばれています。これが一体何を意味するのか、まったく解読出来ませんが、なんだか宝の地図みたいでわくわくしますね。
このようなオールドを試せる機会はそんないと思い、折角なのでハイランドパークを飲み比べてみることにしました。生憎50年、60年代のものはボトル売りが多く、グラス売りは70年代からで、果たして飲み比べに意味があるのか甚だ疑問な年代差でしたが、とにかく2種類飲んでみました。
ハイランドパーク 1977-2006 ラメゾンドウイスキー50周年ボトル
シェリー樽、48.5%、27年熟成。
【Nose】
ウッディ、レーズン、フローラル、クローブ、ディル、僅かにに塩気。
【Taste】
レーズンや柑橘系フルーツ、黒糖、進むにつれ海藻系のピート、火薬。
【Rating】
Very Good
【Thought】
こちらは言われて飲めば特徴を掴めるぐらいのハイランドパーク感が残っています。このブログ最初の投稿にあるように、私がハイランドパークのシェリーを持っていて、飲み慣れているからかもしれませんが、余韻にかけて感じる塩気を帯びた若草や海藻系のピートは、私のイメージと合致します。
まぁしかし20年代のものと比べてどうかと言われると、正直よくわかりません。火薬系の香りはシェリー樽由来でしょうし、ディルもそうなのかもしれません。
それはそれとして、これもかなり美味しいです。先に飲んだものが濃厚すぎてマヒした感がありますが、これを最初に飲んでいたらもっと感動していたと思います。なんといってもメゾンドウイスキーの50周年ボトルですからね。
ハイランドパーク 1985-2015 シルバーシール
バーボンバレル、51%、30年熟成。
【Nose】
グラッシーな若草系ピート、ミルキーなフルールキャンディ、少し石鹸。
【Taste】
トフィーな甘味、桃、フルーツ感たっぷり。
【Rating】
Very Good
【Thought】
85年蒸留でバーボンバレル、もはや前の2杯とは全く違うスペックで、飲み比べの意味もないな、なんて思っていたところ、確かに全然違うんだけどかなり美味しいくて、もうどうでもよくなってしまった1杯。
まったくキャラクターが違います。植物系の香りで、まさにラベルにある草原のよう。パヒュームというか石鹸のような香りも微かにあります。フルーツ感がふんだんに出ていて、飲んでみるとジューシーな桃。
結局飲み比べて分かったことは、どれも美味しいということぐらいか…
今回飲んだセラミックボトルですが、カスクストレングスでボトリングされたに違いないなく、それが奇跡的に良いコンディションで保管されていたために、このような高いアルコール度数を維持でき、素晴らしい状態で残っていたんだと思います。芳醇で力強い香り、しっかりとボディーのある飲みごたえのあるテイスト、そして熟成感とどれをとっても75年蒸留のラメゾンボトルを上回っています。
しかし同時に、こんなことがあり得るのだろうか、という疑念も浮かびます。以前、60年台でさえ、度数が落ち、ヒネた香りに支配されたボトルに出会ったことがあります。ましてや今から約90年前の蒸留です。通常フェイクの可能性も疑ってしかるべきところです。色々を考えを巡らせてみたのですが、しかし結局は、①コルクの質感からかなりの年月ボトリングされていたことは間違いないこと、②ボトルの入手自体相当古くされていること、③価格設定が極めてリーズナブルであること(騙して儲けようという意図が無い)、から本物と推定、というか信じたいと思います。
何よりもあまりにも美味しく、これをフェイクに入れる必要がないと感じます。
古ければいいというわけではありませんが、第二次世界大戦前に蒸留され、その戦火を潜り抜け、今に至るこの1本。なかなかにロマンの詰まったウイスキーでした。